今の時代、職人気質は通用しないのか?【飲食店経営者と雑談した話】

人間関係

こんにちは。すずきです。(@seiz_suzuki

いつも通り10㎞のランニングを終えた僕は、

「金曜日だし、一度行ったことのある、とても美味しかったあのお店に行こう!」

と思い、湘南台駅近くにあるステーキハウスちんちく林に、2度目の訪問をしました。

この前食べたシンプルなハンバーグの味が忘れられず、気さくなおかみさんとも会いたかったため、夕方に訪問しました。

こだわり抜いたハンバーグは味がしっかりと染み込み、人参は柔らかく甘すぎてとろけてしまいました。

ご飯は半ライスにしていただき、デザートには自家製レアチーズケーキでシメました。

店内は僕と店主、おかみさんの3人しかいなかったのですが、帰り際に、

「レアチーズケーキ、好きなのかい?」

と店主から聞かれ、「この前食べた味が、忘れられなくて」と言ってから、話し込んでしまいました笑。

今日は飲食店における、こだわりの強い頑固オヤジさんとのお話を紹介します。

広告なんて、40年以上出してねぇ

おかみさんは、この前同僚と訪問したことをしっかりと覚えてくれていました。

「この席に座っていたよね?」

と。僕も、

「そうですそうです!

『このお店は一見さんお断りみたいな雰囲気の入り口だから、入りづらいんですよね』

っていう話をしましたよね!」

と、覚えていただいたことに歓喜してまくし立てました。

すると店主は、

「そういう風に、入りやすいようにはなってねぇんだよ

と言いました。

その時僕は、ふと疑問に思ったのです。

このご時世、宣伝や広告をして多くのお客さんに来てもらうことこそが、1つの戦略ではないのだろうかと思ったからです。

もちろん広告費はかかりますが、

  • YouTubeでも、
  • ブログでも、
  • SNSでも

そうした「フォロワー」や「ファン」の数は無形の資産であり、多ければ多いに越したことはありません。

すぐに知れ渡らせることができるからです。

しかし、店主から出て来た言葉は驚くべきものでした。

「うちはな。40年以上、広告なんて出してねぇんだよ

衝撃のイナヅマが、僕の体を流れました。

食べログやらメディアやらでちやほやされれば、売上は伸び、多くの人に味わってもらえるというメリットがあります。

それでも、店主は続けてこう言います。

「そうやっていっぱい人に来てもらうのは、俺はあんまり好きじゃねぇんだよな

俺は本当に『うまい』って思ってもらえる人に、来てもらいたいだけだから」

とてもカッコいいと、僕は素直にそう思いました。

ぶっきらぼうにしゃべっているようでも、店主の言葉の1つ1つに重みがありました。

  • 「俺は職人だから、最高の状態で食ってもらいてぇのよ」
  • 「『さっき電話に出ててお肉が冷めちゃったから、チンしてください』って言ったやつがいて、キレる寸前だった」
  • 「待ち合わせのお客さんといえども、全員揃ってからじゃないと肉は焼かないね」

自分の「技/業」にこだわりがあって、プライドがあるからこそ、最高の状態でお客さんと対峙したい

そんな想いが、言葉に乗っているようでした。

「まぁ、今の時代には合わねぇのかもしれないのかもなぁ」

嘆いているはずの店主は、どこか覚悟を決めたような、それでいて清々しい言い方をしていました。

このお店が出す肉は、また食べたくなってしまう美味しさです。

それは、店主が命を込めて作っているハンバーグだからなのだと思います。

「魂は、細部に宿る」

こじんまりと経営しているお店かと思ったら、とんでもない職人がいるお店でした。

「インスタに載せて、少しでもこのお店の良さを知ってもらおう!」

と思った僕は、ちょっと恥ずかしく感じました。

でしゃばるな、と。

手当たり次第に「うちに来てくれ!」と言わずに、黙って「最高のご飯」を提供するあたり、さすが職人だなと感服しました。

職人気質は時代に合わないかもしれない。しかし命を、魂を込めて作り上げる作品は、神がかったものばかりだ。

3年じゃあ無理だなぁ

近くのお店で、「板前になる」と言って修行をしていた人が、店主を訪ねて来たことがあったそうです。

「僕は3年修行したのですが、お店を持とうか迷っています…」

そう聞いた店主は、

3年じゃ無理だなぁ

と、一蹴しました。

僕ら職人ではない一般人からしてみても、職人になろうとするなら、確かに10年や20年はかかるような気はします。

ただこの言葉は、40年以上お店を経営されている店主から放たれた言葉であったため、また違った重みがありました。

起業家の方々の本を読んだり、動画を見ていたりしますと、

「1年で何かを成し遂げようなんて、それほど甘いことはない」

と書いてあったり、言われたりします。

一体どういうことなのだろうかと考えをめぐらせていたのですが、彼らはしっかりとヒントをくれています。

  1. 会社員や公務員でも、1年目は研修があって、3年くらい経ってやっと戦力になる。
  2. 事業を始めることだって一緒であって、1年目から成功することはない。
  3. ましてや、起業や個人事業を学んで来ていないみなさんなら、なおさらだ。

と。

まったくもってその通りです。

学校の先生も、最初の1年は「初任」として扱われ、研修を受けたり先輩教師から直接学びを請うたりします。

僕自身の感覚からしても、僕が実際にまともに戦えるようになったのは3年目〜4年目でした

周りの教員たちと話してみても、

「若い頃の俺は、マジで使い物にならなかった」

と、みな口をそろえて言います。

そうなんです。

ちょっとやそっとでは、サラリーマンだって戦力にはなりません。

自分の腕一本で食べていく職人であるならば、その道のりはなおさら長いものとなることでしょう。

さらに店主は、その板前さんに聞きます。

  • 「自分の包丁は持っているのかい?」
  • 「もちろん自分で研いでるんだよね?」

すると、どちらに対しても返事は「NO」だったそうです。

イチロー選手がバットとグローブを大切にしているように、商売道具には投資すべきだと、多くの書籍に書いてありますし、事業をされている方も同じことを言っています。

店主の持っている包丁は、もちろんこだわり抜いたものでしょうし、毎日研いでいるのでしょう。

そうやって自分の腕を、道具を、磨いているのですね。

そんな職人から出された美味しいご飯が食べられるなんて、これほど嬉しいことはありません。

結局話し込んだ後、「絶対にまた来ますね!」と言ってお店を去りました。

短い期間で成功しようと思わないほうがいい。どんな仕事でも、最初の数年は必ず下積み時代になるからだ。

職人気質の生き方は、果たして生きにくいものなのか?

僕は店主と話して、職人の格好良さに初めて触れることができました。

この生き方は「数ある生き方のうちの1つ」であると思っています。

現代も昔も「かっこいい人」は軸がしっかりとしていて、

  • かけてきた時間
  • 磨いてきた腕
  • 曲がることのない信念

があり、もうどちらにせよカッコいいのです笑。

僕はこの時代の稼ぎ方を、

  • 多くの人に買ってもらう
  • 多くの人に見てもらう

というような、SNSを利用した形を想像していました。

これは間違ってはおらず、デジタルネイティブの若者たちによるアクセスの方法は、昔とは比べものにならないくらい速くて簡単だからです。

ただ一方で、今日お会いした店主のように、

  • 広告を打ち出さず、
  • 自分が嫌だと思う客には帰ってもらうような笑

そんな商売の仕方も、コアなリピーターを増やすのではないかなと思っています。

実際に僕も「また来たい」と思ってしまいましたしね笑。

中には、店主が名前も知らないようなお客さんがいて、40年ずっと食べに来てくれているのだそうです。

また、子どもを抱えたご家族が来店した時は、その子どもがうるさかったので、

「泣き止まないと冷蔵庫に突っ込むぞ」

と言って泣き止ませたそうなのですが笑、20年後に大人になったその子どもが、またこのお店に食べにきたのです。

「あの時に言われた言葉は、一生忘れません」

と言って再度、来店したのでした。

店主は、

「あぁやって、また食べに来てくれるのは嬉しいね」

と、懐かしんでいました。

今日僕が学んだことは、

  • 曲がらない、確固たる信念があること
  • こだわり抜いて、真剣にサービスや商品を提供すること

これらもまた、今の時代を生き抜く大切なエッセンスなのだということでした。

無作為にフォロワーやファンを増やしたって、中身がお粗末であれば誰もリピートしません。

ブログを書いていますので、胸が痛い言葉ですね笑。

僕もブログを書き始めてまだ1年ですので、「あの時は未熟だったなぁ」と思えるのは3〜4年後なのでしょう。

職人さんってクセが強いのだけれど、やっぱり僕らが憧れるものを持っていて、それは何年も何年も、

  • 積み重ねきたもの
  • 磨いてきたもの
  • 無駄を削ぎ落としてきたもの

なのでしょう。

店主の「肉にかける本気」や「仕事に向かうスタンス」を学べて、本当に良い時間となりました。

話を聞いているところどころで感動してしまい、泣きそうになったのはここだけの話です。

世界中のどことでも繋がれるような今の時代であっても、大切なのはまっすぐな信念や真剣に仕事と向き合う姿勢だ。

おわりに

店主はいつも寡黙に仕事をされているのでしょうけれど、

  1. 僕が1人で誰もいないお店に来店したことと、
  2. レアチーズケーキを頼んだこと笑

が功を奏し、様々なお話を聞くことができました。

  • 現代らしい稼ぎ方をしている起業家も、
  • 古き良き時代を生き抜いて来た職人たちも、

根っこの部分は熱い想いがあって、それはどちらも尊敬に値するものです。

僕も自分のスキルを磨き、彼らのような人生を生きていきたいと思います。

それではまた!

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