こんにちは。すずきです。(@seiz_suzuki)
この間、再び別の生徒の特別指導にあたりました。
以前から僕とは関係のあった生徒でしたが、学校を去るかどうかの瀬戸際にいることを知っていたため、正直なところここ最近では当該生徒と距離を取っていました。
しかし先生たちの特別指導の記録を見てみますと、なんと「大変良好」という字が並んでいる…
- 無気力で反抗的
- バチバチにピアスの穴が空いており
- 夜遊びもここ最近ずっとしていたらしい
とのことです。
そんな生徒に一体何が?
以前少し話したことはあったものの、僕は少し緊張した面持ちで指導部屋のドアを叩きました。
変わった姿
扉を開けて会ってみますと、そこには耳にピアスの穴は空いているのに、「好青年」をそのまま絵に描いたような16歳の生徒が座っていました。
前に染めていた髪は黒く戻っており、目を合わせることなく大人を無視しきっていたはずの目は、落ち着いて僕の目をじっと見つめていました。
と話し始めてみた瞬間に、生徒の空気が変わっていたことを感じました。
以前と全く違う。
と、半ば強引に僕のほうから話し始めたのですが、生徒は「いいですね」と言って話すことになりました。
と言いますと、しっかりとした口調で僕に事の顛末を話してくれました。
なるほどいろいろあったのだなと聞いていますと、
と、16歳の少年が言ったものですから、びっくりして目を丸くしてしまいました。
僕自身のことを振り返って見ますと、
「自分の未熟さを感じることができた時は20歳を過ぎてから?…いや社会人2〜3年目の20代半ばくらいのものか」
びっくりしすぎて「もうこの歳にして悟りを開いたのか?」と思ってしまいましたね笑。
と聞いてみますと、
と言ってくれました。
担任の先生は、毎朝その生徒のために正門に立って待ってくださり、モーニングコールまでしてくれていたそうです。
「僕にはできない芸当だな」と感心してしまいました。
担任の先生は僕よりも年下ですが、素晴らしい先生です。
君だよ。変わらなきゃいけないと思えた君自身と、そこから変わろうと思えた君が一番すごいんだ
と、僕は語り始めました。
以前の自分と重なる部分
若い時は、
- 「自分で何でも解決してきた」
- 「自分が世界の中心」
- 「全ては自分を軸に回っている」
と勘違いしていたものでした。
僕も高校時代は顧問との折り合いが悪く、目も合わせませんでしたし、露骨に嫌な態度を取っていました。
自他共に認める「クソガキ」でした笑。
僕自身もわからないのですが、どこかでふっと思ったことがあったんですよね。
「このままではいけない。変わらなくちゃいけない」と。
それからというもの、先生や友達に対して、敬語を使ったり丁寧な言葉遣いを心がけたりするようになりました。
(その後も少しイキってはいたのですが、当時としてはマシになったほうだと思います)
俺がどんなに頭良くてもさ、ずっとそんな態度じゃ周りは取り合ってくれなかったんだよ。
でも礼節さや丁寧さ、人への尊敬や敬意を示し始めてからはどんどん人が寄ってくるようになったんだ。
君もそういう風に変わることができたのなら、絶対に今後、人が寄ってくるようになる。
『〇〇さんのところで働かせてください』『〇〇さんとなら一緒に仕事がしたいです』と周りが君を放っておかなくなる。
とにかく、今変われたことは今後の人生で必ず活きてくる。
君は素晴らしいよ
そんなことを話していると、うっすらと涙がにじみ、前が見えなくなりそうになりました。
生徒はずっと、じっと、話している僕から目をそらさずにいてくれました。
ここからさらに「感謝」について語り始めます。
恩を返す
僕は3人兄妹だったので、
- 朝5時に起きて弁当を作ってくれいていた母親のこと
- 朝から晩まで働きに出ていた親父のこと
を思い出しながら話しました。
あれさ、すげぇんだよ。頭が上がらないっていうか。
当たり前のように朝飯作ってくれるのに『朝は気持ち悪い』とか言って俺、平気で朝メシ残してさ。
そんでもって弁当は持って行くけど、帰ってきてから洗い忘れたりとか。
洗濯物なんて洗濯機に放り込んでおけば、キレイにたたまれて戻ってくる。
そんなこと、当たり前に思ってはいけないんだなって。
でもそれがわかるのって、一人暮らしを始めてからだったんだよね。
君はまだ若いからわからなくていいし、わかろうとしても難しい。
でも今君にできることは、そんないつも味方でいてくれる親に感謝を伝えることなんだと思う。
夜遊びして帰りたくなかった時っていうのは、いわゆる『反抗期』だろうからわからなくもないけどさ。
それでも君のことを心配して、何かあったらこうして学校も続けさせてやりたいって、いつでも君を守ってくれる存在なんだ。
だから感謝をしなきゃね。
それはお世話になった人に、お金を払うとかプレゼントをあげるとか、そういうことではないんだよ。
親はね、ただありがとうって伝えるだけで、君が『生まれてきてよかった』って伝えるだけで、本当に嬉しいんだよ。
そして担任の先生にも感謝しなさい。
こんなに君のことを想い、学校を続けさせようと熱心になってくれる先生は他にいないよ
と話しているだけで目頭が熱くなっていたことがわかりました。
いつのまにか常日頃から自分が思っている気持ちを、その生徒にぶつけていることに気がつきました。
おわりに
とうとうと話を続けていると、あっという間に50分が過ぎてしまいました。
その生徒には何度も、
だからまたここからやり直そう
と伝えました。
人が変わる瞬間というのは、もちろん周りの大きな影響が作用している場合が多いです。
しかし「どんなに言って聞かせてもわからない人は、いくつになってもわからない」というのもまた真理です。
最終的には本人次第だということは、いつになっても変わらない事実です。
だから僕は、今回のこの生徒のケースは「レア」だと思っています。
話を美化したくないわけでもありませんし、その担任の先生の情熱は意味がないのだとも思いません。
ただ「最終的に決めるのは生徒本人である」というシビアな現実を、僕はしっかりと念頭に置いておきたいのです。
教員が情熱を持って教え諭したとしても、「生徒たちを更生させていくのは難しい」という印象のほうが強いです。
相手をしている生徒は1人だけではないですし、「全員に構っていられない」という残酷な言い方をしても、「うん。実際そう」と頷く先生が大半だと思います。
そんな現実の中だったからこそ、その生徒は本当に輝いていました。
やったことを反省しているというより、何か自分の根本的な未熟さから脱却していた様子でした。
こうなれば、今後社会でうまく渡っていけるようになるでしょう。
また失敗もするかと思いますが、ベースがしっかりしているのでもう問題はありません。
とも、僕は伝えました。しかしここは「学校」です。
「やり直しのきく場所でもある」ということも伝えました。
自分の未熟さに気づき、親や周りの人に感謝をし、恩を返していくために、自分が一所懸命幸せに生きていく。
これができたから、もう大丈夫です。
この先の生徒の未来も、きっと明るいことでしょう。
また生徒からいろんなことを学ばされてました。
僕も感謝を、恩返しを、まだまだ続けて生きていこうと思います。
それではまた!
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