こんにちは。すずきです。(@seiz_suzuki)
ダニエル・カーネマンのファスト&スローを読み始めました。
上下巻となっておりまして、まだ最初のほうしか読んでおりませんが、なかなか読み応えのある本です。
普段の自分がいかに、
- 何事も思い込んで
- 怠けて思考していたか
がわかりました笑。
頭の良さやIQが、必ずしも直感や経験と一致しないという面白い研究でした。
簡単な概要からお伝えし、感じたことを書いていきます。
ヒューリスティックスとは?
「ヒューリスティックス(heuristics:発見的手法)ってなんだろう?」
と思いネットで調べたのですが、うーんなんだかイマイチわかりづらいですね…
とりあえず調べてもわかりづらかったので、本書を読み進めていきましたが、こちらほうが理解しやすかったです。
簡単に言いますと、ヒューリスティックスとは直感的思考によって「近道をしてしまうこと」だそうです。
面白い例が挙げられていました。
Q.:勤勉で真面目、物静かで几帳面な人は、アメリカでどちらの職に就いていると思うか。
A:図書館司書 B:農家
という問いに対し、僕は疑いもなくAを選びました。
もちろん全くもって悪い解答ではありません。答えがあるわけでもありませんしね。
しかし実際にアメリカでとられた統計データを見てみますと、図書館司書と農家では圧倒的に農家が多いのは明白で、解答として農家を選ぶことのほうが確率的に正解に近いのです。
確かに言われてみれば「図書館司書ってなかなか割合が少ないというイメージだよな…」と想像できそうなものですよね。
「問い」に出てきた人の性格を「自分の経験」に当てはめてしまったことで、より近いほう/それっぽいほうを直感で選んでしまったということでした。
もう一つはとても有名な問題です。
Q:バットとボールは合わせて1ドル10セントです。バットがボールより1ドル高いとき、ボールはいくらでしょう。
これは言わずと知れた人の直感を否定する問題です。
問題自体を知らない人は、大抵の場合直感で「10セントでしょ?」と答えてしまいます。
するとバットが1ドル10セントになってしまい、ボールの金額と足すと1ドル20セントと計算が合わなくなります。
正解は「バット:1ドル5セント、ボール:5セント」ですよね。
僕は頭の中でボールを”x”とおき、バットを”x+100″としまして、
x+(x+100)=110
2x=110-100
2x=10
∴ x=5
というように一所懸命計算しました笑。
ある程度人間の直感というものは頼れることは間違いありませんが、
- チェスや将棋の名人が素人相手に「あと何手で詰む」と計算する
- 敏腕投資家が「今後のA社の株は上がるだろう」と予想する
- 日常の場面で「この雰囲気はBさん絶対に怒ってるな」と予想する
- 運転時に「あの車はユラユラ揺れているからちょっと危ないな」と予想する
といった時です。
しかし「問い」のように直感に頼っても間違っていることもあるのです。
これはどの仕事、プロフェッショナルにとっても知っておくべき、とても大切な考え方です。
ファスト&スローとは?
このタイトルの「ファスト&スロー」はそれぞれ簡単にいうと「直感&熟考」だと思いました。
本書では、キャラ設定として人間に内在するその2つの考え方を、
- システム1(ファスト/直感)
- システム2(スロー/熟考)
のように名付けていました。かわいいですよね笑。
基本的に人間は、
- 熟考を嫌い、
- 省エネで生きていたいがために、
- 思考をサボることがしばしばある。
だそうです笑。
システム1が「主人公」でシステム2が「脇役」だと書いてあり、システム2は「怠け者」です。
先ほどあげた2つの問いのように、ある程度調べたり考えたりすればそこそこの答えを導きだせるはずなのに、それを怠ってしまうのが人間の思考なのだと。
誰であってもどの分野においても、直感的思考に頼る時にはバイアスや思い込みなどが邪魔をします。
これによってエラーを起こしてしまうのですね。
この「エラー」は特に、僕らが意図的に注意を払わないと起こりやすいのだそうです。
「じっくり考えてから答えを導け!」と言われれば、システム2も重い腰をあげてくれます笑。
本書では「熟考しないと危ないぞ」という警鐘をならすというよりも、多くの人がなんとなしにシステム1を頻繁に使って生活しており、知らないうちに直感的思考に頼っているのだということが書かれています。
生活して行く上で、
- 危機を察知したり、
- 「AしたらBになるでしょ」ということが感覚的にわかったり、
するのは、蓄積された経験のおかげでもあります。
しかしそれが時に、無意識のうちにエラーを起こしているということにも気づかなければならないのだなと思いました。
怖いのは数々の実験から導き出された結果が、本人の意識とは全く関係のないところで起こっているということです。
合理的に見えて、意外と非合理な存在である人間。
「かわいいな」とも思いますが、注意していきたいですね。
仕事で直感的思考に頼っていないか?
まだ本書をあまり読んでいませんが、僕が途中まで読んで感じたことは、仕事においてそうした無意識下で勝手に間違った判断をしていないかという恐怖でした。
スピードが求められる時の対応は、「経験値の高い先生方の信頼性」はバツグンでして、本当に頼りになるなと思いますし、「以前はこうだったから、ここはこうしよう」といったようにすぐに回答がきます。
ただ「教師」という職業は現場においての経験が大きな部分を占める一方で、
- 時代に取り残された価値観
- 古風な指導法や教授法
が、いまだに散見されているという批判も相次いでいます。
- 指導において今までの生徒との接し方でよいのか?
- 中学校や家庭との連携は今まで通りでよいのか?
- 机や黒板はずっと変わっていないが、それで学習効果は良くなっているのか?
- 「オンライン授業では何もできるはずがない」と授業を放棄して、ただただ課題をやらせているだけではないのか?
など、パッと思いついただけでもたくさんの疑問や課題点があげられます。
これは直感的思考に頼っていることだけにとどまらず、
- 「面倒臭い」
- 「変わるのが嫌だ」
- 「考え始めるとキリがない」
- 「コスパが悪いから試さないほうが結果的にいいはず」
など単なる現状維持主義がまかり通っていることも原因としてあります。
腰を据えて考えなければならない時は、経験則やネガティブな思い込みに基づくのはやめにしてじっくり考えて解決策を出していかなければなりません。
システム2の出番ですね。
- 「先輩教師がそうしてきたから」
- 「学校ってそういうものだから」
- 「生徒ってそういうものだから」
と、感覚でぽんぽん対応していくのはやめにしていきたいものです。
そして何より時代の変化に追いついていくためには、様々な新しいことにどんどんチャレンジしていかなければいけません。
生徒も授業も環境も、1つの枠にはめ込まずに多様性を尊重し、教師たちほど失敗や間違いを恐れずに課題に立ち向かっていかなければならない時代です。
そうしてじっくり考えつつ同時進行でいろんなことを試していれば、「先生も頑張ってるじゃないか」と、きっと生徒たちも褒めてくれることでしょう。
おわりに
本書で出てくる「直感的思考によるエラー」を発見した実験の数々は、別に教員に限った話ではありません。
もっと抽象的に、
「人間って基本的には直感に頼っていて、しかも意外と間違えてることがあるのだ」
というものだからです。
- 「人間の思考の不確かさ」
- 「謎の自信に対する根拠のなさ」
を笑っているような話しぶりでした笑。
具体例が多い分、「これはどんな分野でも応用できるな」と感心しながら読み進めております。
特に教育では生徒の認知に対しての研究も大切であり、教育関係の長期的な実験が本書でも取り上げられています。
「幼少期にシステム2(熟考)を頻繁に使っていた生徒は、その後の人生においても直感的な誤りをしない傾向にある」という結果が出ていて、とても驚きました。
- GRIT(やり抜く力)
- マインドセット(柔軟な考え方)
に通ずるものだと感じました。
他にもプライミング効果についての実験も、本書では取り上げられていました。
たとえば生徒に”give”という単語をたくさん聞かせたり読ませたりすることで、その後のアウトプット活動の際に生徒がよく”give”を使うようになるといった効果です。
これは「幸せ」にも関係してくる話だったので興味深かったですね。
例えば、
「自分がどんな気分のときでも、優しく親切に振る舞いなさい」
という考え方は、プライミング効果によればあながち間違いではない教えだということが示唆されています。
日々つまらなかったとしても、笑っていれば本人の自覚なくして人生が楽しくなってゆくということだからです。
人間の無意識の中に潜り込んだ、見事なトリックですよね。
プライミング効果を使って「常に優しく丁寧に、冷静で優しく笑顔」でいれば、きっと自然に幸せな人生に近づけるはずです。
「プライミング効果」は直感に頼るものですが、そうやって自分の「脳」を騙してしまうのも、意外と効果的なときがあるのですね。
本書は行動心理学ベースのお話が多いですが、
- 自分の普段の生活や仕事
- 人との会話や判断/決断
においてとても役に立つと感じました。みなさんもぜひご一読ください。
それではまた!
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